偉人に学ぶ─ダメ人間の美学
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ファクトリー(=工場の意。ニューヨーク・西47丁目)
┗ポップアートの奇才、アンディ・ウォーホルが使用していたアトリエ。
 大胆な作品のほとんどがこの場所で生まれた。有名無名を問わず
 あらゆるジャンルのアーティスト達が出入りしたことでも有名。

銀色のアルミホイルで覆われたこの工場には「スーパースター」達がこぞって
集いました。元々名のあるスターだった面々もあれば、巨匠が「スーパースター」
と呼んだことにより、真のスターになった面々もありました。
その他にも、ゲイ、ジャンキー、性倒錯者、ありとあらゆる異端児が自由に
出入りしていたようです。

そんなファクトリーとドラッグとは切っても切れない仲にありましたが、
狂宴とも言えるパーティーの主催者は、どこまで行っても傍観者。
ドラッグには一切手を出さず、冷静な目で観察するのみ。
例え美しい少年が 踊りながら飛び降り自殺をしようとも、全く動じません。
ただ「フィルムに残したかったのに。」と悔しがるだけです。

全てを受け入れるその姿勢は、ファクトリーに活力を与えましたが、
それと同時に破滅をも呼び込みました。

徐々に歯車を狂わせつつあったパーティー会場は、
ヴァレリー・ソラナスという女性の一撃により終焉を迎えます。
レズビアンであり、[全男性抹殺団]の主催者でもあった彼女は(加入は本人のみ)
その行動や言動から、既にファクトリーへの出入りを禁止されていました。

しかし1968年。
彼女は妄想と錯乱の中、拳銃を片手にファクトリーへ飛び込み、巨匠に向けて発砲。
その足で「ウォーホルを撃ったわ!」と警察に飛び込み、逮捕されます。

五時間に及ぶ大手術で一命を取り留め、2ヵ月後には復活した巨匠でしたが、
ファクトリーは以前の面影をなくしました。移転先の新ファクトリーでは
人の出入りが制限され、ファクトリーの象徴だった壁一面の銀紙も剥がされます。

ファクトリーの終焉は、“60年代”という、一つの時代の終焉でもありました。


私┃が┃撃┃ち┃ま┃し┃た┃
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I SHOT ANDY WARHOL
ヴァレリー・ソラナスに焦点を当てた同名映画の
オリジナルシナリオから見る60年代ポップカルチャーブック



■今日の余談─アンディ・ウォーホル展
└十年ほど前、私は「アンディ・ウォーホル展」に出向いた。
 丁度、ファクトリーに関する書籍に魅了されていた頃だったので、
 ウォーホル本人に対しての興味はかなりあったが、実は当時、作品に
 対しての興味はほとんどなかった。あちこちで見かけるポストカードの
 イメージが先行してしまい、ペラペラな印象しかなかったのだ。

 まぁ話の種にと、やくざな気持ちで足を運んだ私だったが、
 実際に作品を目の前にしてみれば・・不覚にもひどく感動してしまった。
 とはいえ、アート音痴の私に天才の色彩感覚や美的センスが分かるはずがない。

 「ぅお〜。でけぇ〜〜・・。」とにかくまず、その大きさに感動した。
 実物はポスターの比ではない。見上げる首が痛くなるのに感動した。
 そして次に「ぅお〜。はみ出てる!」と、はみ出すインクに感動した。
 機械的でペラペラ。という私の先入観が覆されたことに感動した。

 機械ははみ出さない。機械は間違えない。
 同じ大量生産にしても、目の前の作品たちは枠をはみ出したり、インクが
 よれていたり、明らかに人の手による量産であることを物語っていた。

 「機械になりたい」というのがウォ−ホルの口癖だったらしいが、機械のようで
 いて紛れもなく人間である彼に、私は改めて魅了されてしまったのである。

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