偉人に学ぶ─ダメ人間の美学
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太宰 治(1909〜1948)
┗本名、津島修治。青森県生まれ。小説家。
 退廃的な文章で知られる短編の騎手。
 「走れメロス」「斜陽」「人間失格」等、代表作多数。

「走れメロス」誰もが知るこの物語。
確かに友情は美しい。そして素晴らしい!けれども、このさわやかな作品は
巨匠の発作的、突然変異的産物とも言えるでしょう。

前期・中期・後期。巨匠の文献を大きく分けると三期に別れますが
明るく美しい作品群は全て中期に集中。では、その前後はどうなのか。

暗い。暗い。暗い。とにかく暗い。惨め。そして自虐的な前期。
それがどうしたことか、第二次世界大戦が始まった途端に突然明るくなり
「走れメロス」に代表される、美しく肯定的な作品を次々と生みだす中期。
戦争が終わると落胆したかのように、また暗さと惨めさに拍車をかける後期。
どんなに己を責めようとも、蔑もうとも、卑しめようとも、まだ足りない巨匠。
挙句の果てには「生まれてきてすみません」と謝ったりもします。

その言葉どおり、自殺マニア。心中マニアでもあった巨匠。

昭和4年:20歳。
 左翼思想と己の出身階級に悩み、下宿先で睡眠薬を服用し 自殺を図るが未遂。
昭和5年:21歳。
 婚約者でもある“初代”が帰郷しているすきに、二つ年下の人妻と睡眠薬を使い
 無理心中を図り女性のみが死亡。自殺幇助の罪に問われるが、起訴猶予。
昭和10年:26歳。
 大学落第と入社試験の失敗を苦に、山中で首吊り自殺を試みるが、これも失敗。
昭和12年:28歳。
 一度目の無理心中以降に同棲していた婚約者“初代”と温泉内で無理心中失敗。
 帰京後、初代と別離。

昭和23年:39歳。
 一年程前にうどん屋で知り合った女性“山崎富栄”とともに6月13日深夜、
 玉川上水に入水。6日後に両者の遺体発見。

悪女の他殺説、愛の心中説。多くの謎を残し今も世の学者達を悩ませる巨匠の死。
どこから入水したのかすら断定できておらず、死の真相も分かりません。

しかし巨匠にとっては五度目の正直。
ここは一つ、喜ぶべき死とも言えるのではないでしょうか。


そ┃の┃暗┃さ┃に┃浸┃る┃
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人間失格  著/太宰治
こう言っちゃなんですが、笑えます。あまりの惨めさについ吹きだして
しまったあなたは立派なダメ人間だと言えましょう。



■今日の余談─私の周りのダメ人間達
└友人Fは生粋の太宰治ファンである。
 私の本棚にも、Fの強烈な勧めで購入した太宰治文庫が並ぶ。

   「勧められたから買っちゃったよ。」
 と、私が文庫本を見せるやいなや、即座に目を輝かせ
 『あのくだり読んだ?まだ読んでないの?ここの文が・・。』
 と、私に読ませるべく ページをめくるF。

   そして、ふと訝しげな顔で手を止めるF。
 『ここの文、私のと違う・・・。』
 どうやら自分の文庫では右のページにあった同じ文章が
 私の文庫では左のページに来ていることが気に食わないらしいF。

   またある時は『この本もいいんだよ。え?買ってないの?』と、
 嬉しそうに お勧め個所の朗読までしてくれるF。
 『人からナントカのナントカを受けても、死なんかなとナントカえた。』
 ナントカばかりで、さっぱり意味が分からないFの朗読。
 しかし『漢字は分からなくても、勘で読むから困らない。』と満足気なF。

   Fは満足そうだが、勘の鈍い私は「ナントカ」では満足できず、
 そして日々本棚にFお勧め文庫を増やしていくのである。

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