「走れメロス」誰もが知るこの物語。
確かに友情は美しい。そして素晴らしい!けれども、このさわやかな作品は
巨匠の発作的、突然変異的産物とも言えるでしょう。
前期・中期・後期。巨匠の文献を大きく分けると三期に別れますが
明るく美しい作品群は全て中期に集中。では、その前後はどうなのか。
暗い。暗い。暗い。とにかく暗い。惨め。そして自虐的な前期。
それがどうしたことか、第二次世界大戦が始まった途端に突然明るくなり
「走れメロス」に代表される、美しく肯定的な作品を次々と生みだす中期。
戦争が終わると落胆したかのように、また暗さと惨めさに拍車をかける後期。
どんなに己を責めようとも、蔑もうとも、卑しめようとも、まだ足りない巨匠。
挙句の果てには「生まれてきてすみません」と謝ったりもします。
その言葉どおり、自殺マニア。心中マニアでもあった巨匠。
昭和4年:20歳。
左翼思想と己の出身階級に悩み、下宿先で睡眠薬を服用し 自殺を図るが未遂。
昭和5年:21歳。
婚約者でもある“初代”が帰郷しているすきに、二つ年下の人妻と睡眠薬を使い
無理心中を図り女性のみが死亡。自殺幇助の罪に問われるが、起訴猶予。
昭和10年:26歳。
大学落第と入社試験の失敗を苦に、山中で首吊り自殺を試みるが、これも失敗。
昭和12年:28歳。
一度目の無理心中以降に同棲していた婚約者“初代”と温泉内で無理心中失敗。
帰京後、初代と別離。
昭和23年:39歳。
一年程前にうどん屋で知り合った女性“山崎富栄”とともに6月13日深夜、
玉川上水に入水。6日後に両者の遺体発見。
悪女の他殺説、愛の心中説。多くの謎を残し今も世の学者達を悩ませる巨匠の死。
どこから入水したのかすら断定できておらず、死の真相も分かりません。
しかし巨匠にとっては五度目の正直。
ここは一つ、喜ぶべき死とも言えるのではないでしょうか。
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人間失格 著/太宰治 こう言っちゃなんですが、笑えます。あまりの惨めさについ吹きだして しまったあなたは立派なダメ人間だと言えましょう。 |