そのIQ、なんと215。超人的頭脳の持ち主であったこの巨匠は
やってられんとばかりにさっさと高校を中退した後 職を転々としながら
17歳にして雑誌に短編を3作発表。作家としての道を早々に歩き始めました。
そして、その実力を決定的に見せつけたのは24歳の時。
処女作「遠い声 遠い部屋」が出版されるやいなや、大ベストセラーに。
超人的IQを用いて、何歳の時にこんな作品、何歳の時にはあんな作品。
と、早々に人生計画を立てていた巨匠はその後も数々の作品を発表。
ユーモラスな短編あり。心温まる小説あり。そして実際の殺人事件をもとに
取材に3年、執筆に3年もの歳月を費やしたと言われる「冷血」あり。
それら作品の完成度への驚きもさることながら人々はその文体に驚きました。
一人の人物がこうも異なる文章を綴れるものかと訝しがられるほど、
発表の作風を自在に変化させました。さすが、
「何をかくかじゃない。どう書くかだ。」と常日頃から言っていただけの
ことはありますな。
売れっ子作家の道を歩みだしてからは上流社交界にも興味津々。
もちろん巧みな話術で、向かうところ敵なし。たちまち社交界でも売れっ子に
なりましたが、そんな巨匠にも悩みがひとつ。背が低かったのです。
その身長は160cmそこそこ。
このコンプレックスはかなり根強かった様子ですが、作品中の男を小さくする
ことで解消。男性が主人公の場合はたいてい皆ハンサムなのに背が低い。
そしてチビ。子供。と馬鹿にされてます。
そのコンプレックスと関係あったかなかったか・・。
女性は好きでも愛する事はできなかった巨匠。ある日、自分はゲイである。と
堂々表明。これも一大センセーションを巻き起こしました。
人を驚かす事が大好きな巨匠は、もちろんゴシップも大好き。
ゴシップを聞くだけでは飽き足らなくなった巨匠はゴシップを執筆しちゃいます。
それ、どう考えても自分のことでしょ?と思える、ゲイで作家で小柄で
ハンサムな男を主人公に掲げ、社交界でのナイショ話、裏話をほとんど実名、
たま〜に匿名で一挙公開。今でいう暴露本ってやつですね。
やりだまに上げられた有名人はたまったものじゃありません。
当然のごとく社交界から追放同然の扱いを受けた巨匠は一気に孤独の道へ・・
そのことがよっぽど淋しかったのか否か、この自伝的ゴシップ作品が
己の最高傑作だ!と叫びつつ、心臓発作を起こしてしまったので、
結局この作品は未完ままで遺作になってしまいましたとさ。
2003.1.15 「まぐまぐ」より発行
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