偉人に学ぶ─ダメ人間の美学
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トルーマン・カポーティ(1924〜1984)
┗アメリカ南部ニューオリンズ生まれ。
 本名、トルーマン・ストレクファス・パーソンズ
 作家・劇作家。「冷血」により、ノンフィクション・ノヴェルという
 新しいジャンルを確立。O・ヘンリ賞を2度受賞。
 「遠い声 遠い部屋」「冷血」「ティファニーで朝食を」などが有名。

そのIQ、なんと215。超人的頭脳の持ち主であったこの巨匠は
やってられんとばかりにさっさと高校を中退した後 職を転々としながら
17歳にして雑誌に短編を3作発表。作家としての道を早々に歩き始めました。
そして、その実力を決定的に見せつけたのは24歳の時。
処女作「遠い声 遠い部屋」が出版されるやいなや、大ベストセラーに。

超人的IQを用いて、何歳の時にこんな作品、何歳の時にはあんな作品。
と、早々に人生計画を立てていた巨匠はその後も数々の作品を発表。
ユーモラスな短編あり。心温まる小説あり。そして実際の殺人事件をもとに
取材に3年、執筆に3年もの歳月を費やしたと言われる「冷血」あり。
それら作品の完成度への驚きもさることながら人々はその文体に驚きました。
一人の人物がこうも異なる文章を綴れるものかと訝しがられるほど、
発表の作風を自在に変化させました。さすが、
「何をかくかじゃない。どう書くかだ。」と常日頃から言っていただけの
ことはありますな。

売れっ子作家の道を歩みだしてからは上流社交界にも興味津々。
もちろん巧みな話術で、向かうところ敵なし。たちまち社交界でも売れっ子に
なりましたが、そんな巨匠にも悩みがひとつ。背が低かったのです。
その身長は160cmそこそこ。
このコンプレックスはかなり根強かった様子ですが、作品中の男を小さくする
ことで解消。男性が主人公の場合はたいてい皆ハンサムなのに背が低い。
そしてチビ。子供。と馬鹿にされてます。

そのコンプレックスと関係あったかなかったか・・。
女性は好きでも愛する事はできなかった巨匠。ある日、自分はゲイである。と
堂々表明。これも一大センセーションを巻き起こしました。

人を驚かす事が大好きな巨匠は、もちろんゴシップも大好き。
ゴシップを聞くだけでは飽き足らなくなった巨匠はゴシップを執筆しちゃいます。
それ、どう考えても自分のことでしょ?と思える、ゲイで作家で小柄で
ハンサムな男を主人公に掲げ、社交界でのナイショ話、裏話をほとんど実名、
たま〜に匿名で一挙公開。今でいう暴露本ってやつですね。

やりだまに上げられた有名人はたまったものじゃありません。
当然のごとく社交界から追放同然の扱いを受けた巨匠は一気に孤独の道へ・・
そのことがよっぽど淋しかったのか否か、この自伝的ゴシップ作品が
己の最高傑作だ!と叫びつつ、心臓発作を起こしてしまったので、
結局この作品は未完ままで遺作になってしまいましたとさ。

2003.1.15 「まぐまぐ」より発行


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ティファニーで朝食を(DVD)
試写会ではカポーティが椅子からズリ落ちつつ、激怒したという
ヘップバーン主演のお洒落な映画作品。確かに原作とは全く違うかも。
ティファニーで朝食を(単行本)
・・で、こちらが原作。個人的にはこっちのラストの方がダンゼン好きです
より正しいダメ人間道に導いてくれるのは間違いなくこちら!



■今日の余談─私の周りのダメ人間たち
└コンプレックスとは人それぞれである。
 幼少時の私の最大コンプレックスは「自転車に乗れない」だった。
 補助輪付き時代に、踏み切りから転落という経験を持つ私は
 それ以来怖くなってしまい 練習の機会を失ってしまったのだ。

 いわば小学生の足である自転車。これに乗れないというのはかなりの
 痛手である。しかし、どうしても「乗れない」の一言が打ち明けられ
 なかった私は「乗れない」を「乗らない」に変換。
 「自転車に乗れるのは当然だが、膝が悪いので乗ってはいけないと
  医者に止められているのだ」と、ひたすら言い張った。
 しかし一度こんな嘘をつきはじめると、その後近所で練習をするわけにも
 いかない。練習する姿が人目に触れては一大事。かなしいかな。
 快適自転車ライフは遠ざかるばかりである
 
 困った私は自転車のかわりにローラースケートの練習に励んだ。
 転んで傷だらけになりながらも練習する私に、友はつっこんだ。
 「足が悪いのに、そんなに動いたり転んだりしていいの?」
 もっともな質問であるが、こんなツッコミにへこたれる私ではない。
 「自転車をこぐ特殊な動作のみが私の足に害を与えるのであって、
  ローラースケートはいいのだ。」と、身振り手振りに足振りまで加え
 意味の分からない理屈で友をねじふせ、そしてローラースケートのまま
 人の自転車の荷台につかまるという暴挙を続けることで なんとか
 幼少期をクリア。

 結局のところ私が自転車に乗れるようになったのは中学生の時である。
 いざゆかん!快適自転車ライフへ!・・と思ったのもつかの間。
 周囲はあれよあれよの間に原チャリへ移行。
 
 少しずつ時代に遅れをとった私は今でも自転車での片手走行ができず、
 雨の日はずぶ濡れの自転車ライフを送っている。
 


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トルーマン・カポーティ(単行本)
総勢170名が賞賛と誹謗にまみれた作家の生涯を語ります。
叶えられた祈り(単行本)
本文中で触れた、遺作となる自伝的ゴシップ作品


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