辰年の辰月辰日、辰の刻に生まれた巨匠は、その見事な辰並びから
龍之介と名づけられました。
ちなみにあの“金さん銀さん”と同じ年の生まれです。
で、“辰並び”の神童を授かった両親はといえば“厄並び”でした。
父は後厄43歳。母は大厄33歳。「大厄の子」として敬遠された巨匠は
向かいの教会に捨てられてしまいます。とはいっても、これは厄払いの
おまじないのようなもの。この時は誰かが拾うまで形式的に捨てられていたに
過ぎないのですが・・・その後、一年もしないうちに実の母が発狂。
子育てもままならなかったため、結局は母の実家、芥川家で育てられることに
なりました。12歳の時には養子縁組もしています。
なに不自由なく育てられ、そして学業の方も優秀な成績を修めました。
恋もしました。破れた恋もあれば実った恋もあり。結婚をし、
子宝にも恵まれ小説家としても成功・・。幸せな生活・・。
その影で、いつも心にあったのは死への不安と発狂の恐怖でした。
狂人の子はまた狂人なのではないか。憂える日々は続きます。
恋愛も憂える気質であったかどうか。妻の幼なじみと心中未遂なんてのも
やらかしています。かと思えば、匿名でエロ小説を書いてみたり・・。
「赤い帽子の女」という小説があるのですが、こちらの作品には性体験が
ビッチリ・バッチリ。ただ、これは巨匠が書いたと立証されているわけでは
ありません。ありませんがおそらく・・・書いたのでしょう。
憂えるインテリも人の子であります。
いつどんな時も「将来に対するただぼんやりとした不安」を抱えていた巨匠。
そんな35歳のある日、妻や子供と一緒に楽しい食事をすると、一人書斎に
こもり聖書を読みふけります。そして深夜の1時頃、睡眠薬を多量に飲み
寝室へ。自ら望んで“帰らぬ人”となりました。
「最も神の為に同情するのは、神には自殺の出来ないことである。」
2003.02.05 「まぐまぐ」より発行
2006.04 ma氏よりご指摘いただき、一部訂正しました。ありがとうございました
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芥川龍之介全集《1》(文庫) 芥川文学の何がいいかっちゅったら、短いのがいい。 サラッと読めて後からズドーン、またはジワジワと来るのがいいっす。 「鼻」「羅生門」ほか24篇を収録。 |
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河童・或阿呆の一生(文庫) 自殺直後に発見され“敗北の文学”とも言われた自叙伝 「或阿呆の一生」ほか、 晩年の作品も多数収録。 |