オペラ発祥の地イタリアに生まれながら、オペラ嫌いであったという巨匠。
スポーツも嫌いなら政治も嫌い。じゃぁいったい何が好きだったのかと言えば
どこか滑稽で、もの悲しい見世物小屋、サーカスでした。
そのきっかけとなったのは9歳の時。学校ももちろん嫌いであった巨匠は
その窮屈な場所を脱走します。行くあてのなかった巨匠はサーカス団の
テントにもぐり込んで夜明かししました。たった一晩のことでしたが、
幼い脳裏にそのイメージを焼き付けました。
と、同時に脱走癖もつけたのかどうだったか・・・。15歳の時には
駆け落ちもどきを。そして19歳からはローマでの放浪生活を開始します。
似顔絵描きをしたり、新聞・雑誌などのコラムを書いたり、詐欺師まがいの
経験を踏んだりして過ごし、やっと世捨て人らしくなってきたか・・・と、
いうところで第2次世界大戦でイタリア参戦。
戦争なんてとんでもない!兵隊なんてゴメンだ!と考えた巨匠は大学法学部に
入学し、上手いこと兵役を逃れます。その大学で知り合った俳優と意気投合
すると地方巡業にも参加。まさに綱渡り人生。
そうこうするうちにラジオの脚本書きなどの職も徐々に得るようになります。
そして、そのラジオ番組に出演した女優と結婚。(彼女はその後の巨匠作品で
いくつも主演を努めます。おしどり夫婦としても知られました。)
同時に“似顔絵の店”なんていうのもOPEN。しかもこれがまた大繁盛。
綱渡りは綱渡りでも、かなり頑丈な綱ですね。こりゃ。
その後も綱の上を転がる勢いで出世街道をまっしぐら。
映画監督になってからも出世街道まっしぐらです。とはいえいくら出世を
しようとも、いくら芸術家と認められようとも、やはり巨匠が愛したのは、
嘘と虚構の世界。作りこまれた見世物の世界。
巨匠が織り成す映像の世界は芸術的評価の高い作品ばかりですが、
やはりサーカスのイメージ、虚構の世界が色濃く映ります。
では、当の巨匠はどうかと言えば、これが自他ともに認める大ホラ吹き
なんですね。自伝なども出版してますが、どこが本当でどこが嘘なのか、
本人にも分からないそうな。
50回目の結婚記念日の翌日に最期の時がやってきます。心臓発作でした。
イタリア国民はその遺体を国葬、国の儀式として弔います。
そして、その5ヶ月後、追いかけるように妻も旅立ちました。癌の悪化でした。
2003.02.19 「まぐまぐ」より発行
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