偉人に学ぶ─ダメ人間の美学
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エドガー・アラン・ポー(1809〜1849)
┗アメリカ、ボストン生まれ。
 本名、エドガー・アラン・ポー。
 詩人、小説家。SF・怪奇幻想小説の先駆け。
 現代の推理小説の原型を作ったと言われる。
 「アッシャー家の崩壊」「モルグ街の殺人」「黒」等が有名。

旅役者の両親の次男坊として生まれた巨匠。
母親は数々の舞台で主役を演じる、売れっ子女優でした。では父親の方は
どうだったかと言えば・・・大根役者と呼ばれるだけならまだしも、その
実態は酒癖の悪い癇癪持ち。アルコール中毒に身を崩し、俳優業も廃業。
巨匠が1歳の時には、妊娠中の妻と幼い子供たちを捨てて失踪しています。

貧困の中、翌年には母親が結核を患って死亡。孤児になってしまった兄弟は
それぞれ別々の家に引き取られていきました。巨匠の行く先は裕福な煙草業者
アラン家。ここからエドガー・アラン・ポーを名乗るようになりますが、
生涯に渡り、正式に籍を入れてはもらうことはありませんでした。
とは言っても、子供のいなかった養父母は巨匠に愛情を注ぎ、十分な教育も
与えています。

そんな巨匠に実父の血が表れてくるのは、17歳のころから。
大学に進学させてはもらったものの、少ない仕送りをなんとか増やそうと、
賭博に手を出したのが運のつき。
わずか8ヶ月の間に2000ドルの借金をこしらえてしまいます。
当然のごとく大学は中退。その後入学した士官学校も成績は良かったものの、
厳しい規則に嫌気がさし、規則違反をわざと繰り返したため放校処分に。

さらにこの頃からいくつかの作品を発表し出しますが、さっぱり鳴かず飛ばず。
しかし編集者としての職は得ます。この就職に時期を同じくして結婚したのは
27歳の時。妻となったのは実の従妹で、結婚当時は わずか13歳でした。
この年の差からか、巨匠の性的不能説などもあるようですが真相は藪の中。
いずれにせよ夫婦仲が良かったことは確かなようです。
この幼い妻は、アル中で短気。という問題ありありの巨匠を、影に日向に
暖かく支えました。

当の巨匠も、小説はイマイチでしたが、編集者としては敏腕ぶりを発揮。
発行部数を5000部から37000部に伸ばすほどの敏腕振りを見せる一方、
やっぱり癇癪&アル中が災いして一所に落ち着く事はありませんでした。

そんな折の38歳、以前から結核を患っていた妻が病死します。24歳。
早すぎた死。この事実に耐えられなかった巨匠は、その後の数年、ほぼ絶え間なく
酒を浴び続けることになります。そして幾人もの女性に求愛、求婚。
まるで愛する妻など初めから存在しなかったかのように・・・。

泥酔したまま行き倒れている巨匠が発見されたのは、妻の死から2年、
初恋の女性と再会し、婚約までとりつけた矢先のことでした。
病院にかつぎこまれたものの、既に瀕死の重体。そのまま妻のもとへ。
巨匠の名が世に出たのはずっと後のこと。生前は無名のままでした。


愛すべき欠点だらけの夫に、妻はこんな言葉を残していたそうです。

「私が死んだなら、あなたを守る天使になってあげる。
  あなたが悪いことをしそうになったら、その時は両手で頭を抱えるの。
                  私が守ってあげるから・・・。」

2003.03.12 「まぐまぐ」より発行

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黒猫(文庫)
短編なのでサラッと読めますが、読後感はなかなか重厚・・・



■今日の余談─私の周りのダメ人間たち
└幼稚園から小学校低学年にかけて、近所の図書館に足しげく通った。
 近代化には程遠い、その古びたコンクリートの建物は幼い好奇心を
 満たすのに十分な場所だった。

 そこで私が夢中になったのが江戸川乱歩。
 彼の名前がエドガー・アラン・ポーのもじりであるのを知る、もっとずっと
 前の事だが、とにかくまぁ、よく読んだ。・・はずなのだが作品の記憶が
 かなりあいまいである。江戸川乱歩以外の本でお気に入りだったうちの
 いくつかは思い出せるのだが、一番好んで読んでいたはずの「少年探偵団
 シリーズ」などの記憶が全くない。本当に読んだのだろうか。
 いや、読んだのは間違いないはずだ。なのに全く記憶がない。

 そして、不思議なことはもう一つ。
 当時の図書館のイメージを思い返してみた時、実際にはありえないであろう
 ほど、おどろおどろしいのだ。暗くどんよりした空間と、忍びよる孤独感。
 小さく肩を丸め、コッソリと蔵書に顔をうずめる幼稚園生の私・・・。
 館員が座るべき椅子は遠く向こうにあり、そしていつもポッカリ空いている。
 人の気配はない。実際に誰もいないのだ。誰もいないにも関わらず、誰かに
 みつからないよう、こっそりと音を立てずにページをめくる私・・。

 当時の回想を中断し、ふと気づく。
 間違いない。このイメージはきっと江戸川乱歩作品のものだ。
 内容の記憶と図書館のイメージを入れ違って覚えてしまっているに違いない。

 案の定、母親に確認してみたところ、館員がいないどころか、小さな私は
 大変かわいがられていたらしく、いつも飴やら菓子やらをもらっていたという。

 我ながら・・・記憶というのはあてにならないものである。

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 怖いばっかりじゃない。甘くロマンティックなポーに触れられます。

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