小さな時から人を笑わせることが大好きだった巨匠。
バンドを組んでドラムをたたき、芝居に熱中する高校時代を過ごし
大学を中退してシカゴの即興劇団に入りました。

そうこうするうちあのＴＶ番組「サタデーナイトライブ」にレギュラーが
決まります。これどんな番組かといえば、１９７５年以来、現在も変わらぬ
人気を誇るアメリカの老舗番組。ちなみにエディ・マーフィーもここ出身です。

まだ無名だった巨匠は第一回から５年間出演し、絶大な人気を得ます。
中でも人気だったのは「サムライマン」。もしサムライがレジ係だったら
とか、もしサムライがサンドイッチ係だったらとか様々なテーマ（？）に
三船敏郎に扮した大きな体（一般的にはデブとも言う）の巨匠が、
立ち向かいます。
奇声を発しながら刀を振り回し、両替してくれという客のドル札や
サンドイッチにはさむウインナーを、それはそれはもう、役に立たなく
なるまで切り刻みまくるという荒業。
キレまくりで暴走する巨匠はアメリカのお茶の間を湧かしました。

更にダン・エイクロイドとのコンビ「ブルース・ブラザーズ」は
映画化され、ブルース・ブラザーズバンドのアルバムは全米ヒット
チャート１位に。
歌って踊って笑わせることのできるデブ。軽やかなバック転まで
披露するデブの人気はうなぎ上りに上昇していきました。

その上昇と比例させるかのように、ドラッグの量を増やしていった巨匠。
人知れず完璧主義でもあった巨匠はいくら人気が出ても、自分の演技に
満足できないばかりか、更に良質の脚本を捻出すべく、常に悩んでいた
ようです。頭を覚ます程度だったはずが、いつの間にか薬にドップリ
つかってしまうハメになりました。

人気も絶頂期を迎えていた１９８２年、巨匠３３歳。
ホテルの一室で胎児のようにまるまっている巨匠の遺体が発見されます。
部屋にマリファナとヘロインが散らかっていたものの、巨匠の腕には
注射の跡がなかったことと、注射器などの道具が部屋になかったため
警察官は麻薬による事故ではないと誤認を下しかけました。

道具がなかったのは友人が持ち去ったため、注射の跡がなかったのは
わざわざ医療用の極細針を使用して血管に打っていたためだそうです。

「なんでもスマートにやらなきゃならないというわけじゃないし、
　ルールに従う必要もない。面白ければそれでいいのさ」

2003.08.27　「まぐまぐ」より発行