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ジョン・リー・フッカー(1917〜2001)
┗アメリカ、ミシシッピ州生まれ。※1920年生まれ説あり
 足を踏み鳴らしながら演奏するという唯一無二のスタイルを持つ
 ブルースマン。デトロイト・ブルースの父と呼ばれる。
 「ブギ・チレン」「ブーム・ブーム」等が有名。

大家族の農家に生まれた巨匠。
納屋のドアにつけたチューブが初めて手にした楽器だそうですが、
ブルースマンであった養父に本格的なギターを習い、技術を身に付けてからは、
親子で地元のクラブに出演して稼ぎました。

ブルースを生業にしたい。そう決意した巨匠は14歳で故郷を後にします。
26歳になるまでの十数年は、ゴスペルを歌っていましたが、
デトロイトに移住しブルースバーなどに出入りするようになってからは、
徐々にブルースを歌うようになりました。

初のレコーディングは31歳。
緊張のあまり上手く演奏ができなかった巨匠は、
まず最初に、リズムをとりながら床を踏み鳴らした音だけを録音し、
その足音を、演奏中にモニターを通して自分に聞こえるようにしてくれと頼みました。
このおかげでリズムが狂うこともなく最高の演奏が得られたため、
ならば足音もレコードに入れてしまおうということ決定。
このことがきっかけになって、以後、巨匠の足音は画一された個性へと
変化していったのです。

当然と言えば当然とも言える大ヒット。
これに気を良くした巨匠は、考えられないペースでアルバムをリリース。
新曲も出せば古典曲も出し、レコード会社もバンバン変える無節操ぶり。
こちらのレコード会社の契約期間が終わらないうちに、
あちらのレコード会社からもリリース。
契約違反という壁にぶち当たりそうになると、名前を変えて回避しました。
名前が違うから別人です。という建前ですね。
当たり前ですが違法です。

しかも名前がいいかげん。
「テキサス・スリム」「デルタ・ジョン」という売れない芸人みたいなのは
まだいいんですけど、「リトル・ポーク・チョップ」って何でしょう。
ちっちゃい骨付き豚?
挙句の果てには「ジョン・リー・ブッカー」だの「ジョニー・リー」だの・・。
そんなバレバレでいいんでしょうか。点々つけときゃいいんでしょうか。
ちなみに、これらの名前はほんの一例です。

38歳になり、ようやっと一つのレコード会社に落ち着くと、
以後は「ジョン・リー・フッカー」一本で落ち着きました。
そしてリズム&ブルースの到来。白人の若者に絶大な指示を受けます。

74歳にして全英チャート3位を獲得という記録を作り、
78歳で「もう墓に入る準備をする」と引退宣言・・・したものの翌年には復活。
83歳で老衰を迎えるギリギリ直前まで、音楽とともに過ごしました。

2003.10.1 「まぐまぐ」より発行

や┃っ┃ぱ┃ベ┃ス┃ト┃盤┃ 
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The Very Best Of John Lee Hooker版(CD)
世に名を残したブルースマンは多けれど・・・ワタクシ、個人的には
ジョン・リー・フッカーが一番好きッス。視聴もあるので是非どうぞ



■今日の余談─私の周りのダメ人間たち

└寅さんが持つような四角い鞄がお気に入りで、
 どこへ行くにも毎日持ち歩いていた時期がある。

 ちょっとしたノートや本を入れると、
 すぐにいっぱいになってしまう小ぶりの鞄だったが、
 その形状には やはりどこか“旅”の印象があるらしく、
 「どこか行くの?」
 と声をかけられることもしばしばだった。

 ある日の深夜、駅のベンチに座り、友人を待っていた時のこと。
 ふらりと近寄ってきたのは、現役の浮浪者ではなさそうだが、
 近い将来、浮浪者になっている可能性は大いにありそうな一人の男だった。
 男は私の姿をじっと見つめ、いったんは立ち去ったが、
 またすぐに戻ってきた。

 そしてポケットの中を探り、おそらくは所持金の全てであろう
 二枚の札を差し出し、恥ずかしそうにこう言った。
 
 「ラ、ラーメンでも食え」

 そして、訳が分からずポカンとしている私の手中に札をねじこむと、
 「いや、変な意味じゃないから・・・」
 と恐縮しながら去って行った。

 鞄のせいだ・・・と気がついたのは、ずっと後のことである。
 きっと家出でもして途方にくれているように見えただろう。
 そこで、行く当てもなく哀れな私を助けるべく、
 なけなしの二千円を与えてくれたというわけだ。
 
 神のような心の持ち主である。
 だが、そんなこととは気付きもしなかった私は、友人とともに、
 「もうけ。もうけ。」
 と、舌を出しながらボーリングをし、一瞬にして神の金を使い切ってしまった。


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