偉人に学ぶ─ダメ人間の美学
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三島 由紀夫(1925〜1970)
┗東京生まれ。本名、平岡公威(きみたけ)。
 大激動の昭和とともに生きた小説家。その独特の作風は
 三島文学と呼ばれ、海外にも広く知られる。
 「金閣寺」「仮面の告白」「潮騒」等、有名作多数
 

まず頭が良いです。東京大学法学部を卒業後、大蔵省に勤務。
このころには小説家としての名前もポツポツ出ていたため、お役人兼小説家と
して二足のワラジを履いて過ごしました。毎晩毎晩 小説を書き、そして出勤。

こんな毎日が9ヶ月ほど繰り返されたある日、あまりの眠さに耐え切れず
通勤途中に電車のホームから転倒しかけます。世界の三島、危うし!
・・と、当人が思ったかどうかは不明ですが、この一件で目が覚めたらしく、
めでたく小説家一本の道を歩むこととなりました。

生涯に渡って 同性を愛し、フンドシを愛し、わが身を最も愛した巨匠。
虚弱体質であるがゆえの華奢な体格を忌み嫌い恥じていましたが、三十路を
迎えた頃からボディビルに目覚め、モリモリと筋肉を付着させてゆきました。
その後はまるで、筋肉さえあれば怖いものはない!と、ばかりにヤクザ映画に
出演するわ、写真集で裸体を披露するわ、フンドシ一丁で雑誌に載っちゃうわ
「楯の会」なる右翼的思想の会を作っちゃうわ、挙句の果てには腹切って
死んじゃうわと実に大忙し。

これらのことが一部『三島=変態説』を生み出しているのは確かでしょう。
しかしこの異常なまでの自己演出はどこからくるのでしょうか。
十二歳になるまで家にこもる毎日を過ごし、徴兵検査を受けるも戦地には
向かえず、そのまま敗戦を迎えた巨匠。これら事実が 劣等感を増幅させて
いったことは間違いないようです。

そして1970年。それまでの劣等感を克服するかのように、大衆の前で堂々と
「最期の演説」をし、切腹を実演して見せた巨匠はナルシズムを満足させたのか、
全世界に衝撃を与えて旅立っていきました。

「私は詩人だと自分を考えるが、もしかすると私は詩そのものなのかもしれない」

2002.10.23 「まぐまぐ」より発行


三┃島┃を┃ナ┃ナ┃メ┃に┃読┃む┃
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不道徳教育講座(文庫)
大いにウソをつくべし・友人を裏切るべし・教師を内心バカにするべし・約束は守るなかれ・・・
昭和30年代に、週刊明星で連載されていたエッセイ集。
 洒落と毒の利いた教えが満載。正しきダメ人間のためのバイブル(?



■今日の余談─私の周りのダメ人間たち
└三島由紀夫と太宰治といえば、切腹マニアと心中マニア。
 どちらもイッちゃってる人物には違いありません。せっかくなので、
 こんな二人のエピソードをひとつ。
 (太宰治に関してはコチラをご覧くださいね。)

 両者とも、とにもかくにも劣等感をばねに生きていた人物であることに
 変わりはないですが、劣等感を克服しようと努力を重ねる三島由紀夫に対し
 劣等感を全面的に押し出し、ウリにしていた太宰治。
 
 この相反する相手を、少なくとも三島由紀夫の方は嫌っていた様子。
 太宰治を囲む会合の席で皆が賛辞を述べる中、何が何でも自分だけは
 面と向かって「あなたの作品が嫌いです。」と言ってやる!

 そんな野望をあっぱれ実行する三島由紀夫。名前は知れど面識のない相手に
 嫌いだと言われた太宰治はどうしたか。しばらくポカンとした後、
 「まぁ、そうは言うけど、ここに来てるわけだから好きなんでしょう。」

 ぅ〜ん。こちらもあっぱれ・・というか、どっちもどっちのナルシスト対決。
 あなたならどちらに軍配を上げます? 


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