もの心がつくころには孤児となっていた巨匠。
二歳で父を、三歳で母を亡くし、そのゴタゴタで姉とも生き別れ
その後 祖父母に引き取られるものの、七歳で祖母が他界。十歳の時には
別所で暮らしていた姉も他界。最後の近親者であった祖父も十五歳の時に
他界しています。相次ぐ身内の死で天涯孤独の孤児となりましたが、
資産家の親戚のおかげで経済的な苦労は全くなかったようです。
進学も順調。交友関係も順調?旧制中学での寮生活を送っていた十七歳の時、
同室の男子学生との仲をただならぬ仲に発展させています。交友という枠を
かなり超えて・・・発展させています。
「僕達の世界での最大限度までお前の肉体を楽しみたく、無意識の内に
いろいろと新しい方法を発見した」
「でも舌や脚(への愛撫)と肉の底との差はどれだけだろう。」
結局“肉の底”まで到達することはなかったようですが、
いったい何を思ったのか。同性の恋人への熱い思いを語った手紙を
学校の宿題として教師に提出する巨匠。そして戻ってきたものを
そのまま恋人に送ったそうな・・・。
ちなみに、当時の思い出を綴った未完の書が存在したのですが、その原稿の
半分程度が「伊豆の踊り子」の原案になりました。では残りの半分には何が
書かれていたのかといえば、それはそれは狂おしいまでの恋心が綴られて
いたそうな・・・。ふぅ。
その後はご存知の通り、日本を代表する作家として名を馳せるわけですが、
晩年は大量の睡眠薬を常用し完全に中毒になっていた様子。
新聞に連載もされていた「古都」のあとがきには本人自ら「中毒がひどくて
何を書いたか覚えてない」と記述しています。
そしてノーベル賞受賞から4年後にあたる1972年。
仕事場である逗子マリーナマンションの一室で、ガス管をくわえたまま
横たわる巨匠の遺体が発見されます。孤児として生きた巨匠はその最期も
天涯孤独。遺書らしきものひとつ残すわけでもなく、ただひっそりと
自らの命を終えました。
2002.10.23 「まぐまぐ」より発行
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川端康成全集(文庫) 愛の男子寮生活を当時の日記や手紙を用いて事細かに綴った 「少年」は、おそらくこの全集でしか読めません。第十巻に掲載。 |