この巨匠は・・どうなんでしょか。
ある人は華奢な線を用いたデッサンから、水墨画を思わせる素晴らしい画家で
あると言い、またある人は、幻想的な深みある文章から天才的文豪であると言い
そしてまたある人は、えっ?この人が美女と野獣の監督をっ?と驚きます。
千の顔を持つ男と言われる由縁はこの辺りにあるわけですが、本人は一貫して、
我輩は詩人である。と公言してきました。
そんな巨匠の生まれはパリ郊外の別荘地。
おじいちゃんが家に音楽隊を呼んでしまうという とてつもないブルジョア
家庭に生まれました。ボンボンの詩人など、胡散臭くていけませんね。
暗い影をなんぼ背負っての詩人ですよ。この巨匠も例外ではありません。
不幸が舞い降りるのは8歳の時。弁護士であった父親がピストル自殺をして
しまいます。あまりにも突然の死。理由は全くわかりません。
親の自殺は必要以上に子を苦しめるもの。自分が父親の同性愛シーンを
目撃したから自殺したのではないか。と後年になって悩んだこともあった
ようです。しかし、父親が同性愛者であったかどうかは実のところ分かって
いません。幼き日の巨匠が本当にそんなシーンを目撃したのか、
それとも薬物による妄想なのか・・・それも今となっては永遠の謎。
同性愛者は息子、すなわち巨匠の方です。こちらは誰の目にも明らか。
ひどい阿片中毒に悩まされたのも、年下の恋人が若くして急死をした直後から
でした。もちろん男の恋人です。
しかし、何事にもただでは転ばないのが芸術家。阿片中毒の苦しみは「阿片」と
いう小説に。恋人との苦しみは「白書」という自伝的小説に。こちらは匿名での
出版でしたが、まぁ・・・バレバレです。
ブルジョアらしく社交的であり、そして人々から愛された巨匠が亡くなったのは
1963年、74歳の時。死因は心臓発作でした。
20年来の友人でもあったシャンソンの女王、エディット・ピアフの訃報。
これが引き金になったようです。
2002.11.13 「まぐまぐ」より発行
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恐るべき子供たち(文庫) 死をかけて遊ぶ姉と弟・・・。美しくも残酷な子供社会を描いた問題作。 |