幼い頃からインクの匂いと活字の魅力にとりつかれていた巨匠。
11歳の時に友人と一緒に発行した少年誌は、こんにゃく版や謄写版
(印刷技術の種類)で印刷された本格的なもの。子供の遊びと笑っておれません。
15歳の時に発行した探偵雑誌は活字を用いて更にレベルアップ。
帰宅途中の小学生をターゲットに売りさばきました。おとなしかった巨匠は
宣伝部長に早変わり。この探偵雑誌のポスターを自作し、電柱や小学校の塀に
、
貼りまくりました。今でこそ珍しくもない電柱の張り紙。けれどもそんな
慣習がなかった当時、傍らにいた友人は、巡査に怒られるのではないかと
ヒヤヒヤしたそうです。
その後、一家で朝鮮に渡りますが、学業に従事したかった巨匠は父の知人を
頼りに単身で帰国。そして上京。早稲田大学に入学を果たすものの、とにかく
貧乏。成績は優秀で、研究者になる夢もありましたが、貧乏すぎて断念。
大阪で就職。雑誌の仕入れ係りに任命され、本問屋を回る日々を過ごしました。
ある日のこと、仕事の手柄からふいのボーナスが手に入ります。
さ〜て、ここからが放浪生活の始まり。金を手にした巨匠は今までの貧乏の
ツケを返すべく遊びまわります。それが元でクビ。クビになったら放浪。
一人旅を満喫して東京へ戻った巨匠。一応仕事には就くのですが、
何故か長続きせず。東京やら大阪やら三重やらを転々として回ります。
唯一 長続きしたのは三重にある造船所でした。しかし長続きしたから
といって真面目に働いていたかと言えばそうでもありません。
仕事をサボっては寮の押入れで居眠り。そんな怠慢社員がなぜクビに
ならなかったかと言えば、お偉いさんが文学や哲学に興味ある巨匠のことを
気に入ったからです。巨匠だけは自由勤務が許されることになりました。
エコヒイキ・・な気がしないでもないですが、ちゃんと造船所発の
刊行物も発行しています。
・・・が、やっと2号を発行したというところで、やはり退職。
東京に戻って勉強したい。というのが大きな理由でした。
で、戻ってどうしたか。確かに、本にたずさわる仕事には就いてます。
古本屋を開業したり、編集の仕事を転々としたり、智的小説刊行会なるものを
結成したりして、大阪と東京を行ったり来たり・・
あ、この転々生活の中で結婚もして、子供も授かってますね。
生活は激しく貧乏だったり、そこそこ裕福だったり、その時によって様々。
そうこうしているうち、36歳の時に発行した「蜘蛛男」が大ベストセラーに。
その後はトントン拍子で探偵小説家の第一人者としての道を歩みます。
・・・が、そこはやっぱり巨匠。やってくれます。原稿が続かなくなること多数。
連載物の中途終了も多数なら、代筆も多数。その中には、当時アシスタントを
努めていた横溝正史が書いたものもありました。
いくら代筆がおおかろうが、もう既に偉大な作家。
多くの書物を世に残しての70歳。脳出血のためこの世を去りました。
2003.03.19 「まぐまぐ」より発行
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