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江戸川 乱歩(1824〜1965)
┗三重県名張生まれ。本名、平井太郎。
 筆名はエドガー・アラン・ポーのもじり。
 小説家。日本における探偵小説の創始者。
 怪奇的でいて妖艶。その独特な文体は大衆を魅了した。
 「少年探偵団」「怪人二十面相」「人間椅子」等、有名作多数。

幼い頃からインクの匂いと活字の魅力にとりつかれていた巨匠。
11歳の時に友人と一緒に発行した少年誌は、こんにゃく版や謄写版
(印刷技術の種類)で印刷された本格的なもの。子供の遊びと笑っておれません。
15歳の時に発行した探偵雑誌は活字を用いて更にレベルアップ。
帰宅途中の小学生をターゲットに売りさばきました。おとなしかった巨匠は
宣伝部長に早変わり。この探偵雑誌のポスターを自作し、電柱や小学校の塀に
、 貼りまくりました。今でこそ珍しくもない電柱の張り紙。けれどもそんな
慣習がなかった当時、傍らにいた友人は、巡査に怒られるのではないかと
ヒヤヒヤしたそうです。

その後、一家で朝鮮に渡りますが、学業に従事したかった巨匠は父の知人を
頼りに単身で帰国。そして上京。早稲田大学に入学を果たすものの、とにかく
貧乏。成績は優秀で、研究者になる夢もありましたが、貧乏すぎて断念。
大阪で就職。雑誌の仕入れ係りに任命され、本問屋を回る日々を過ごしました。

ある日のこと、仕事の手柄からふいのボーナスが手に入ります。
さ〜て、ここからが放浪生活の始まり。金を手にした巨匠は今までの貧乏の
ツケを返すべく遊びまわります。それが元でクビ。クビになったら放浪。

一人旅を満喫して東京へ戻った巨匠。一応仕事には就くのですが、
何故か長続きせず。東京やら大阪やら三重やらを転々として回ります。

唯一 長続きしたのは三重にある造船所でした。しかし長続きしたから
といって真面目に働いていたかと言えばそうでもありません。
仕事をサボっては寮の押入れで居眠り。そんな怠慢社員がなぜクビに
ならなかったかと言えば、お偉いさんが文学や哲学に興味ある巨匠のことを
気に入ったからです。巨匠だけは自由勤務が許されることになりました。
エコヒイキ・・な気がしないでもないですが、ちゃんと造船所発の
刊行物も発行しています。

・・・が、やっと2号を発行したというところで、やはり退職。
東京に戻って勉強したい。というのが大きな理由でした。

で、戻ってどうしたか。確かに、本にたずさわる仕事には就いてます。
古本屋を開業したり、編集の仕事を転々としたり、智的小説刊行会なるものを
結成したりして、大阪と東京を行ったり来たり・・
あ、この転々生活の中で結婚もして、子供も授かってますね。
生活は激しく貧乏だったり、そこそこ裕福だったり、その時によって様々。

そうこうしているうち、36歳の時に発行した「蜘蛛男」が大ベストセラーに。
その後はトントン拍子で探偵小説家の第一人者としての道を歩みます。
・・・が、そこはやっぱり巨匠。やってくれます。原稿が続かなくなること多数。
連載物の中途終了も多数なら、代筆も多数。その中には、当時アシスタントを
努めていた横溝正史が書いたものもありました。

いくら代筆がおおかろうが、もう既に偉大な作家。
多くの書物を世に残しての70歳。脳出血のためこの世を去りました。

2003.03.19 「まぐまぐ」より発行

明┃智┃小┃五┃郎┃、┃現┃る┃ 
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黒蜥蝪(黒とかげ)(文庫)
妖艶な女怪盗(黒蜥蜴)と名探偵明智小五郎との頭脳戦。
三島由紀夫がこの作品に惚れ込み、戯曲化したことでも有名。



■今日の余談─私の周りのダメ人間たち
└前号の余談コーナーで、江戸川乱歩作品を無数に読んだはずなのに、
 内容の記憶が全て欠落しているという私の話をさせていただいたが、
 よくよく考えてみると、どうもこれは遺伝らしい。

 私の両親はそろって読書好きだ。
 実家にはそれこそ古本屋が開業できそうな勢いの文庫本があふれ返っている。
 両親そろって推理小説を好む傾向にあるため、部屋を見渡せばそこかしこに
 「〜〜殺人事件」の文字が躍っている。

 推理小説に殺人事件はつきものなので、当たり前と言えば当たり前の話だ。
 だが、問題は同じ殺人事件がいくつも混じっているということなのである。

 つまり、両親そろって自分が読んだものを端から忘れてしまうので、
 次回本屋に立ち寄った際、また同じものを購入してしまうのである。
 または、両親とも同じ殺人事件に興味を持ち、それぞれに購入してしまう
 場合もある。よって我が家には同じ作品が出版社別に揃っていくのだ。
 その辺も古本屋っぽい由縁である。

 私は推理小説好きということもないので、殺人事件がダブることはないのだが、
 なぜか「郵便配達は二度ベルを鳴らす」を4度ほど購入している。
 ザッと読んでは忘れてしまうくせに、また本屋に行った際に興味を持ち、
 そしてまた忘れ・・の繰り返しである。なぜこの本なんだろうか。
 映画の方も特に際立って好きということはない。
 原作の方も特にこれと言って・・・。

 これはもう、両親の血を受け継いでしまったから。としか言いようがないのである。

裏┃話┃を┃読┃む┃  
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乱歩おじさん─江戸川乱歩論(単行本)
乱歩の親戚にあたる著者が、巨匠の素顔を明かします。
ついでに代作の真偽も明かされちゃいます。

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